ウェルビーイングとは?その効果と実践方法やビジネスでの事例を紹介

「ウェルビーイングとはどんな概念?」
「ビジネスで注目される理由はなに?」
「ウェルビーイングをビジネス上で追求するメリットが知りたい」

管理職やマネジメントをしている女性の中にはこのような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

2019年より提唱されている「働き方改革」やワークライフバランスの重要性が見直される中、「ウェルビーイング」という考えが注目を集めています。

本記事では、ウェルビーイングの概念や注目されている社会的背景、経営におけるメリットを紹介していきます。

ここで、ウェルビーイングの全体像を知り、人材マネジメントのヒントにしてください。

1.ウェルビーイングの基本概念

ウェルビーイングとは、幸福であり、身体的・精神的・社会的すべてにおいて満たされている状態を指す言葉です。

これは、単に身体的な健康状態を指すだけではなく、感情として幸せを感じ、社会的にも良好な人間関係を構築していることと考えることができます。

そして、ウェルビーイングの概念は、主に企業の経営やマネジメントという観点から注目を集めています。

また、ウェルビーイングが向上することによって、従業員の働く意欲や生産性が向上することがわかってきています。

従業員を監督・指導する立場にある管理・マネジメント層のウェルビーイングを高めていくことで、職場環境全体の生産性の向上などが期待できます。

以下では、ウェルビーイングの基本概念について解説します。

ウェルビーイングの基本概念

  1. ウェルビーイング(Well-being)とは
  2. 類似概念との比較
  3. 主観的ウェルビーイングと客観的ウェルビーイング

それぞれ具体的に見ていきましょう。

(1)ウェルビーイング(Well-being)とは

ウェルビーイング(Well-being)とは、身体的、精神的に健康な状態にあるだけでなく、社会的、経済的に良好で満たされている状態にあることを意味する概念です。

直訳すると、「良い(Well)」と「状態(being)」であり、この言葉が初めて登場したのは、1946年に世界保健機関(WHO)が設立された時にまで遡ります。

基本概念については、1951年に日本で公布された世界保健機関憲章で、スーミン・スー博士が定義した「健康(Health)」で、以下のように定義されています。

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にある」

参考)https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/

従来の健康とは、身体的に良好な状態を表す狭い範囲の概念を意味するのに対して、ウェルビーイングは身体的・精神的・社会的にも良好な状態という広範な概念を表しています。

つまり、身体的な健康状態にとどまらず、精神的にも社会的・経済的にも満ち足りた状態を指します。

具体的には、心身ともに健康であることはもちろん、仕事や収入面、人間関係においても満たされていることがウェルビーイングを意味するのです。

近年では、物質や金銭などで満たされる「瞬間的な幸福」よりも、充実した人生・生き方に重点を置く「持続的な幸福」を追求することに関心が向かっているため、ウェルビーイングの考え方や概念がこれまで以上に注目を集めています。

(2)類似概念との比較

ウェルビーイングと混同しがちな言葉に、「ウェルネス(Wellness)」と「ハピネス(Happiness)」があります。

それぞれの概念についても確認しておきましょう。

#1:ウェルネス(Wellness)

ウェルネスとは、身体が健やかであること、すなわち身体が元気な状態のことを表しています。

ウェルビーイングは身体的な健康にとどまらず、仕事やプライベート、人間関係などを含めたすべてが満たされた状態を指すのに対して、ウェルネスは身体の健康と幸福を重視する概念です。

そのため、ウェルビーイングはウェルネスを包摂する概念であると言うことができるでしょう。

#2:ハピネス(Happiness)

ハピネスとは、個人が抱く精神的な満足や幸せのことを指しています。

また、一時的・瞬間的な精神面での幸せを表す場合に用いられることが多いです。

一方で、ウェルビーイングには、持続的なニュアンスも含まれています。

金銭などで満たされる瞬間的な幸福ではなく、「充実した人生」や「満足できる生き方」といった持続的・継続的な幸福を追い求める概念がウェルビーイングです。

このことから、ウェルビーイングは上述したウェルネスおよびハピネスを同時に内包する概念ととらえることができます。

(3)主観的ウェルビーイングと客観的ウェルビーイング

上述の通り、ウェルビーイングは精神的・身体的・社会的に満たされた状態を指します。

そして、物質的な豊かさを超えて、人々の豊かさや満足度を測る指標としても価値を持っています。

ウェルビーイングという概念を豊かさを測る指標と捉えた場合には、主観的および客観的な尺度から測られる価値観が存在しており、それぞれ評価されるべきものとして考えられています。

具体的には、以下の2つの尺度が存在します。

2つの尺度

  • 主観的ウェルビーイング:個人が主観的に感じる価値
  • 客観的ウェルビーイング:誰もが客観的に把握できる価値

主観的ウェルビーイングとは、一人ひとりが自分自身で感じる認識や感覚によって幸福や満足度を評価することができます。

主観的ウェルビーイングの代表的なものとしては、「人生への充実度や満足感」や「生活への自己評価」などが挙げられます。

一方で、客観的ウェルビーイングとは客観的な数値基準で測ることができます。

例えば、GDPや平均寿命、生涯賃金などの統計データなどです。

「個人が主観的に感じる幸福感や価値」とGDPなどの「客観的な数値指標をもって測定される幸福感や価値」の2つの要素から良好な状態であるか否かを計測することが重要です。

近年では、2つの価値観の中でも主観的にその人自身がどのように幸福や満足度を感じているのかがより重要視されるようになってきています。

2.ウェルビーイングを構成する5つの要素

ウェルビーイングという概念には、これを構成する5つの要素が存在します。

つまり、5つの要素について向上させることができれば、ウェルビーイング全体を高めることにつながります。

ここでは、ウェルビーイングを構成する5つの要素について、以下の2つの代表的な指標について解説していきます。

2つの代表的な指標

  1. PERMAの法則
  2. ギャラップ社の調査

(1)PERMAの法則

ウェルビーイングの概念として有名なものに、「PERMA」という指標があります。

これは、「ポジティブ心理学」の創始者であるマーティン・セリグマン氏が提唱したウェルビーイングを構成する5つの要素です。

ポジティブ心理学とは、従来の病的な状態の治療に加えて、健全な精神状態の維持・促進を目的とする学問領域を指します。

人は以下の5つの要素を満たしていると幸せである、とするもので、頭文字をとって「PERMAの法則」と呼ばれています。

要素 主な感情
Positive Emotion(ポジティブな感情) うれしい、楽しい、など
Engagement(没頭・没入) 仕事、趣味、スポーツなどへの没頭
Relationship(人との良好な関係) 人とのつながりを大切にして楽しむこと
Meaning and Purpose(意味と目的) 生きる意味や目的を自覚すること
Achievement(達成感) 目的・目標を達成して充実感を得ること

前向きな気持ちを持ちながら仕事や趣味などに取り組み、人とのつながりを楽しみながらポジティブに生活を送ることが幸福につながると言うことができるでしょう。

また、ただ日々を送るだけではなく、生きる意味や目的を自覚して、それを達成することで充実感や満足感を得ることもウェルビーイングの要素であると理解することができます。

(2)ギャラップ社の調査

世論調査やコンサルティング業務を行うアメリカのギャラップ社が実施した調査によると、ウェルビーイングには5つの共通した要素が含まれているという結論が出されました。

具体的には、以下の要素が挙げられます。

ウェルビーイングの5つの要素

  1. キャリア・ウェルビーイング(Career Well-being)
  2. ソーシャル・ウェルビーイング(Social Well-being)
  3. フィナンシャル・ウェルビーイング(Financial Well-being)
  4. フィジカル・ウェルビーイング(Physical Well-being)
  5. コミュニティ・ウェルビーイング(Community Well-being)

以下で一つひとつ説明していきます。

#1:キャリア・ウェルビーイング(Career Well-being)

キャリア・ウェルビーイングとは、1日の大半を占める仕事や私生活について、情熱を持って取り組んでいる状態のことを指します。

キャリア・ウェルビーイングには仕事のキャリアだけでなく、家事や育児など「人生におけるキャリア」も含まれます。

1日の活動に自分が満足しているかはもちろん、ワークライフバランスに満足しているか、といった点が重要なポイントになります。

SBMラボでは、キャリアと人生を決めるのは自分自身だということを自覚し、自分のキャリアと意思に沿って、「体と心の美の翼(ウェルビーイング)」を授けることにより、今までにない生産性とキャリアのイノベーションを実現することができます。

また、仕事に対して情熱を持つ従業員は、4.で述べる「ワーク・エンゲージメント」が高く、パフォーマンスが高いことも知られています。

#2:ソーシャル・ウェルビーイング(Social Well-being)

ソーシャル・ウェルビーイングとは、人間関係が良好である状態を指します。

単にたくさんの交友関係を持てばいいわけではなく、周囲の人たちと信頼や愛情でつながっているかどうかが重要なポイントです。

人間は社会的な動物のため、幸せや不幸は他人に伝染していきます。

つまり、周囲の人が幸福を感じている場合には自分も自ずと幸福を感じることができ、自分が幸福を感じている場合には周囲の人によい影響を与えることができます。

このことは、私生活にとどまらず、仕事や職場環境に対しても同じことが言えるでしょう。

仕事においては、業務上のコミュニケーションにとどまらず、合間の雑談や社内チャットを通じたやりとりも含めた円満な関係性を構築することが重要です。

日々の暮らしや仕事の中で、深い人間関係を築き、愛情を持つことで社会生活全体の充実や質の向上が期待できるのです。

#3:フィナンシャル・ウェルビーイング(Financial Well-being)

ファイナンシャル・ウェルビーイングとは、経済的に良い状態のことを指します。

例えば、生活するためのお金が十分にあり、将来に備えた資金も適切に管理・運用できている状態です。

収入を得る手段や収入額に満足しているかなども、経済的な幸福度に関係しています。

お金がなくても幸せに生活することもできますが、お金がある方がより日々の生活の満足度を高めることができるでしょう。

また、ウェルビーイングは持続的・継続的な幸福を追求することを指す概念でもあるため、現在および将来に対する資産形成が重要な意味合いを持つことになります。

支出や収入の状況を把握し、将来にわたる資産の管理・形成も重要な要素として挙げることができるでしょう。

#4:フィジカル・ウェルビーイング(Physical Well-being)

フィジカル・ウェルビーイングとは、心身共に健康で、物事を成し遂げるのに十分なエネルギーを持っている状態のことを指します。

ストレスや病気に悩まされることなく、適度な睡眠や運動などを通じて健康的な状態にあることが本来的な意義と言えます。

また、ビジネス面に関して言えば、身体的な健康だけでなく仕事に意欲的に取り組めるモチベーションが維持できている状態かどうかも、フィジカル・ウェルビーイングに含まれます。

#5:コミュニティ・ウェルビーイング(Community Well-being)

コミュニティ・ウェルビーイングとは、地域社会や家族、所属している団体など、自分を取り巻くコミュニティにおいて幸福な状態を指します。

ビジネス面では、職場や取引先など複数のコミュニティが存在します。

それぞれのコミュニティ内で良好な関係を構築できており、満たされていることが重要です。

自分が属する組織や団体において、仕事の成果を挙げたり地域社会の活動に参画したりして、「つながり」を感じることで幸福感を高めていくことになります。

3.ウェルビーイングが注目される社会的背景

このように、非常に多様な要素から構成されるウェルビーイングの概念や考え方は、近年になってからビジネスの場において注目されるようになりました。

ここでは、ウェルビーイングが注目されている要因や社会的な背景を解説していきます。

具体的には、以下のような要因が挙げられます。

注目される社会的背景

  1. 働き方改革の推進
  2. 価値観の多様化
  3. 女性の社会進出
  4. 労働生産性の向上
  5. SDGsにおける言及

順にご説明します。

(1)働き方改革の推進

日本は、高度経済成長期を経て、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少に直面しています。

また、ブラック企業などが社会問題化したこともあり、従来の働き方の見直しや多様化が進みました。

政府は「一億総活躍社会の実現」を掲げ、2019年から働き方改革関連法案が施行されました。

この法案により、多くの企業が労働時間や労働条件の柔軟化のほか、ワークライフバランスの確保や労働者の健康と安全の向上など、働き方の多様化に取り組み始めました。

従業員一人ひとりが働きやすい環境を整備することで、幸福度や仕事に対するやりがいなどを高めることができます。

そのためには、ウェルビーイングという概念や考え方に基礎を置く制度や仕組みづくりが必須と言えます。

働き方改革の関連法案にはウェルビーイングという文言は組み込まれていないものの、その目的を達成するためには、ウェルビーイングが果たす役割は大きいと言えるでしょう。

(2)価値観の多様化

ダイバーシティという概念が浸透しつつある現代では、働く人の価値観も加速度的に多様化してきています。

例えば、性別や国籍、文化など、それぞれが異なるバックグラウンドを持つ人が集まり、チームで仕事を進めたり同じ目標に向かって切磋琢磨したりする環境が当たり前になりつつあります。

このような背景から、企業経営においては従業員の価値観の多様性を尊重することが強く求められるようになりました。

多様性を尊重することで、コミュニケーションが活発になり、さまざまなビジネスアイデアが生まれることにつながります。

また、従業員が持つ多様な価値観を企業が受け入れることで、従業員は働きがいや職場環境への満足感を抱くことができ、これまで以上にやりがいや幸福感を得ることができます。

従業員の職場や企業に対する信頼や愛着を形成することは、優秀な人員の確保や離職率の抑制、新たなイノベーションなどのメリットを企業が享受することにもつながるのです。

(3)女性の社会進出

ウェルビーイングが注目される社会的背景の一つとして女性の社会進出があります。

世界経済フォーラムが毎年、「ジェンダー格差に関する調査」を行っています。

この調査は、経済・教育・医療へのアクセス・政治の4分野について各国の男女格差を調べるものです。

日本は146か国中118位と、依然として政治と経済の分野で女性の社会進出の遅れが目立っています。

この調査で15年連続世界一となっているのがアイスランドです。

アイスランドでは、社会政策から変えることで女性の社会進出とジェンダー平等の推進を図っています。

2歳以上の幼児は無条件で保育を受けられる「皆保育」制度や男性も育休を取得することができる「共有育児休業制度」を確立することで、女性は子育てと仕事の両立ができるようになり、また育休後の社会復帰も容易になりました。

さらに、政府は企業に対して、役員のポストに就く人員が男女ともに40%以上を占めるように義務づける法律を制定するなど、女性の社会進出に力を入れています。

女性は妊娠・出産以外にも、生理に伴う症状や疾病など、男性と比べるとライフステージの変化が激しく、生活環境の変化によって仕事を続けることが困難な場合もあります。

企業側が妊娠や出産などのライフイベントにしっかり向き合うなど、従業員の多様な働き方や健康的な働き方を支援する制度を整えることが大切です。

そのような制度を整備するためには、ウェルビーイングに対する理解が不可欠です。

つまり、社会における女性の活躍を推進するためにも、ウェルビーイングの概念や考え方は重要な意味を持ちます。

(4)労働生産性の向上

従業員のウェルビーイングが向上することによって、企業全体の生産性の向上につながることが期待できます。

ウェルビーイングが向上することで、従業員の「ワーク・エンゲージメント」も相関的に向上することが知られています(後述4.参照)。

ワーク・エンゲージメントは、仕事に関してポジティブかつ充実した心理状態であることを指し、以下の要素から構成されます。

構成する要素 具体例
活力 仕事から活力を得ていること
熱意 仕事内容に誇りとやりがいを抱いていること
没頭 仕事に熱心に取り組んでいること

これらはウェルビーイングを構成する要素とも重なり合う部分があるため、組織におけるパフォーマンス向上のためにも、従業員のウェルビーイング促進に取り組むことは重要と言えます。

また、リモートワークなど働き方の多様性が求められている現在では、オンラインによるコミュニケーション機会をどのように確保するかも重要なポイントです。

企業にとっては優秀な人員の確保や企業全体の競争力の向上にもつながるため、ウェルビーイングによるワーク・エンゲージメントおよび生産性の向上が注目を集めています。

(5)SDGsにおける言及

ウェルビーイングが注目を集める背景には、世界の共通目標であるSDGsにおいて言及されたこともあります。

SDGsは持続可能な社会を実現させるための理念であり、17の目標から構成されています。

SDGsの3つ目の目標には、「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」があります。

ここでのウェルビーイングは「福祉」と訳されています。

妊婦や新生児の死亡率、感染症対策などをターゲットに定められており、健康や福祉という観点で言及されていることには注意が必要です。

しかし、SDGsは経済や社会、環境の3つのバランスが取れた社会を目指すものです。

同様に、ウェルビーイングも一個人が幸せになればいいのではなく、個人や社会全体が満たされた状態とは何かを考える概念のことを指しています。

また、持続的・継続的な幸福を追求するウェルビーイングの目的は、持続可能な社会の構築を目指すSDGsの指針と適合するものであると考えることも可能です。

そのため、ウェルビーイングはSDGsを達成するための価値観の基準を提供しているとも言えるでしょう。

4.ウェルビーイングとワーク・エンゲージメント

ワーク・エンゲージメントとは、従業員が仕事に対してポジティブかつ充実した心理状態にあることを指す概念です。

近年、企業の経営層や人事層ではワーク・エンゲージメントとウェルビーイングの関係性を重視する傾向が高まりつつあります。

以下では、ワーク・エンゲージメントの概念やウェルビーイングとの関係性について解説します。

(1)ワーク・エンゲージメントとは

ワーク・エンゲージメントとは、従業員が仕事に対してポジティブかつ充実した心理状態にあることを指します。

つまり、ワーク・エンゲージメントが高い人ほど仕事に対するやりがいや熱意を感じていると言えるでしょう。

このような心理状態を保つことで、仕事に意欲的に取り組むことができ、働きがいや活力を持って従業員が仕事に取り組むことが期待できます。

また、ワーク・エンゲージメントを高めることは、従業員の仕事のパフォーマンスを高めて企業全体の生産性の向上が見込めるだけでなく、職場への定着率の向上および離職率の抑制とよい相関関係を与えることが判明しています。

参考)https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-3_02.pdf

なお、後述するように、ワーク・エンゲージメントとウェルビーイングは深いかかわりがある概念です。

もっとも、ウェルビーイングが個人の幸福感や満足感を測る指標や概念であるのに対して、ワーク・エンゲージメントは仕事に対するやりがいや熱意を表す概念です。

そのため、ウェルビーイングは個人の視点から見た概念であり、ワーク・エンゲージメントは企業の視点から見た概念という違いが指摘できるでしょう。

(2)ウェルビーイングとワーク・エンゲージメントとの関係

ウェルビーイングとワーク・エンゲージメントには、職場の心理的安全性や人間関係のほか、職場関係や働きやすさ、働きがいなどの多様な要因が関わり合っています。

例えば、仕事に対してポジティブに取り組むことができていても、職場の人間関係や健康状態などに問題を抱えた状態では、中長期的な視点で見たときに幸福感や満足度が低下することが考えられます。

つまり、ワーク・エンゲージメントの向上のためには、従業員の職場におけるウェルビーイングを向上させることが必要不可欠です。

具体的には、従業員の心身の健康支援や労働環境の改善などを通じて、職場におけるウェルビーイングの向上を行うことが考えられます。

従業員がウェルビーイングを感じられる働きがいのある職場を作ることによって、企業として発展することができます。

(3)企業における導入事例

ウェルビーイングを経営に取り入れ、成果を上げている企業の事例を紹介します。

実際に効果が出ている企業の事例を取り上げるため、これからウェルビーイング経営に取り組む企業は参考にしてみてください。

企業における導入事例

  1. トヨタ自動車株式会社
  2. 楽天グループ株式会社
  3. 味の素株式会社

それぞれ見ていきましょう。

#1:トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では、車の生産台数の維持を目的にするのではなく、「幸せを追求することで、結果がついてくる」というポリシーを掲げています。

すべての社員がより充実した・不安のない人生を送れるように、福利厚生や職場環境、人材育成の各方面からサポートしています。

福利厚生として、社員寮の大規模な整備やスポーツセンターの利用サービス、託児所利用サービスなど、組織力を活かした支援を行っています。

また、結婚をサポートするユニークな制度も導入しています。

#2:楽天グループ株式会社

楽天グループ株式会社では、「Well-being First」という健康宣言のもと、安全な職場づくりや従業員の心身の健康に着目しています。

従業員の心身の健康状態を分析するための調査を定期的に行い、専門家を招いたセミナーを開催することで解決に取り組んでいます。

また出産や育児、介護に関するサポートを整備するほか、役職や雇用形態に関係なく参加できるクラブ活動を通じて従業員間のコミュニケーションの活性化を促しています。

さらに、オフィス内のカフェテリアでは、朝・昼・晩3食の食事を無料で提供することで、複合的に働きやすさと健康をサポートしています。

#3:味の素株式会社

味の素株式会社では、従業員のウェルビーイング向上が人的資産の強化を支えるという考え方から、健康、挑戦・成長、社会・文化、報酬・資産の4つの面から幸福度向上を推進しています。

例えば、健康アプリの導入や面談を実施し、個別にメンタルヘルスをサポートするなどの取り組みを実施し、従業員の心身の健康をサポートしています。

またワークライフバランスを充実させるためにも、労働時間の短縮や会議のクオリティーアップなど、働き方の面からもウェルビーイング向上を推し進めています。

5.マネジメントにおけるウェルビーイング

上述したようにウェルビーイングを追求するメリットは、企業はもちろん従業員にとっても大きいです。

従業員がウェルビーイングを追及し、ワーク・エンゲージメントを高めていくためには、職場環境の整備が必要不可欠になってきます。

そのためには、経営層はもちろん、管理・マネジメント層がウェルビーイングに対する考えや概念を理解することが重要です。

具体的には、ウェルビーイングに関する研修を行うなど、経営戦略の1つと捉え、積極的にウェルビーイング促進のための取り組みなどを行うことをおすすめします。

また上層部だけでなく、中間管理職やマネジメントに関わる全従業員の意識を高めることは、ウェルビーイング実現において必須です。

管理・マネジメント層は従業員と密接なコミュニケーションをとりながら仕事を進めていく必要があるため、ウェルビーイングの考え方や実践について深く理解することが必要不可欠です。

もっとも、ライフステージの変化などによって仕事とプライベートのバランスがとりづらく、セルフケアを後回しにしがちな女性管理職やマネージャーはストレスや疲労を抱えやすい傾向にあります。

従業員のウェルビーイングやワーク・エンゲージメントを向上させるためにも、まずは管理・マネジメント層からウェルビーイングを高めていくことが大切です。

企業と従業員が一体となって、意識や行動改革につなげていきましょう。

まとめ

ウェルビーイングとは、長時間労働やパワハラの是正などの働き方改革だけでなく、あらゆる面において個人の幸福を追求する考え方です。

特に従業員のウェルビーイングを高めることによって、企業側は生産性の向上や人材の確保など、さまざまな面でメリットを享受できます。

そのためにも、経営層だけでなく、管理・マネジメント層からウェルビーイングの重要性を理解することが大切です。

特に、セルフケアに時間や余裕を割くことが難しい女性管理職は、ウェルビーイングについて再認識する必要があります。

管理・マネジメント層がウェルビーイングを追求することは、若手層のウェルビーイングを高めることにもつながり、企業全体としてウェルビーイングを向上させていく起爆剤となります。

SBMラボでは、中堅層の女性社員・リーダー層の方々へ向けたウェルビーイング研修やセミナーを行っています。

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従業員のウェルビーイングを高める第一歩として、ぜひ参加してみてください。