
ルワンダの女性エンパワーメントへの道
アフリカの内陸国であるルワンダは、女性の社会参画において世界をリードする国として注目を集めています。1994年のツチ族に対する大量虐殺から復興した後、経済発展と社会の安定を実現する過程で、女性の力が大きな役割を果たしてきました。
この成功は数字にも表れています。2024年現在、ルワンダ議会における女性の割合は約63.75%と、世界最高水準を維持しています。これは、ルワンダ憲法で定められた議席の30%以上を女性が占めるという基準を大きく上回っています。さらに、女性の労働参加率は約84%に達しており、女性の経済的自立において着実な進展を示しています。
このような変革はどのようにして実現されたのでしょうか。その背景には、1994年のルワンダにおけるツチ族に対する悲劇的な虐殺があります。多くの男性が犠牲となり、残された女性たちが社会を支える担い手となったことが、女性の社会進出を加速させる一因となりました。
しかし、それは単に必要性だけによるものではありません。女性の社会参画は、戦略的な政策と文化的変革により着実に進められてきました。
今回、その具体的な取り組みについて、駐日ルワンダ大使のムカシネ・マリー・クレール大使にお話を伺いました。
政策と文化の変革で実現するワークライフバランス
―― 日本では多くの女性が仕事と家庭の両立に課題を感じています。ルワンダから学べる経験や役立つヒントはありますか?
ルワンダにおける女性のワークライフバランスは、徐々に改善されています。政府は、育児休暇や柔軟な勤務時間など、女性のエンパワーメントを支援する政策を実施しています。育児休暇は、従来の1ヶ月から3ヶ月に延長され、さらに拡充を検討しています。
包括的な支援体制の構築
女性の社会的進出を支援するため、ルワンダでは、制度的な枠組みを着実に整備してきました。女性起業家への支援の導入により、女性のリーダーシップポジションへの進出が増加しました。ジェンダー平等は国家政策の重要な柱と位置づけられ、農村部の女性には全国女性評議会を通じて教育やトレーニングの機会が提供されています。
特に重要なのが、政策の実効性を確保するための体制です。ジェンダーモニタリングオフィスが設立され、政策が適切に実施されているかを監視し、必要な提言を行っています。またジェンダーと家族支援を担当する専門省庁も設置されました。これらの機関による定期的な評価と改善提案により、支援策の実効性が高められています。
家庭からはじまる意識改革
制度面での取り組みと並行して、家庭内での意識改革も進んでいます。ルワンダでは家庭内の男女平等が推進され、男性と女性が互いに支え合う文化が育まれています。子どもたちは家庭や学校で男女平等の価値観を教えられ、女性の働きやすい環境が整えられています男性が積極的に育児や家事に参加することで、真のワークライフバランスが実現しつつあります。
これらの政策や文化の変化は、女性の自信を高め、家庭と仕事を両立させつつ、経済や社会の発展に貢献しています。
男性の家事・育児参加が生み出す社会の変化
―― 日本では男性の家庭参加がまだ進んでいないと感じます。ルワンダでは男性も家庭の仕事を担っているのでしょうか?
ルワンダでは、男性が積極的に家事を分担するようになってきています。特に注目すべきは、男性の家事参加が女性のビジネス活動を支援する形で進展していることです。
変化する家庭内の役割分担
女性が仕事で出張に出る際、男性が育児や家事を担うことが一般的になりつつあります。これは以前のルワンダでは考えられなかった大きな進歩です。教育や啓発プログラムを通じて、家庭内での役割分担の重要性が社会全体に浸透してきた成果と言えます。
もちろん、すべてが完全に変わったわけではありませんが、こうした着実な変化はルワンダ社会全体にポジティブな影響をもたらしています。
自然と調和した美容・健康法が育むウェルビーイング
―― ルワンダの伝統的な美容法や健康法についてお聞かせください。
自然の恵みを活かした伝統的なビューティーケア
ルワンダには、自然素材を活用した伝統的な美容法が今も受け継がれています。
スキンケアには香り付きバターやアロエベラ、蜂蜜などを使用し、様々な種類の泥(クレイ)も美容目的で活用されています。また、ヘアケアには卵、アボカド、オリーブオイルを組み合わせたヘアパックなど、天然素材を生かした方法が好まれています。
さらに、ハーブ療法も日常的に取り入れられており、生姜、レモングラス、ローズマリーなどが飲み物や料理に活用されています。
豊かな自然環境が育む健康的な食生活
ルワンダの食文化は、豊富な野菜や果物の摂取を基本としています。
高地の丘陵地帯に位置し、年間を通じて18度から27度の温暖な気候が保たれているルワンダでは、多様な農作物が栽培されています。料理用バナナやカボチャなど、様々な品種の作物が豊富に収穫され、新鮮な食材を使った健康的な食生活が営まれています。
常に緑に囲まれた環境は、人々の心身の健康にも良い影響を与えていると考えられています。
コミュニティで育む健康文化
ルワンダの健康文化の特徴は、地域社会や家庭内での知識共有を重視している点です。
2024年にユネスコ無形文化遺産に登録された伝統的な踊り「イントーレ(Intore)」は、古くは王宮で踊られていた戦士の踊りが起源とされています。現在では芸術性の高い伝統舞踊としてだけでなく、健康的な生活習慣として地域全体に根付いています。
さらに、近年では毎月2回「Car-free day(マイカー禁止の日)」という現代的な取り組みが全国で実施されています。この日には、市民がジョギングやウォーキング、自転車などを楽しみながら、環境への配慮と健康促進を同時に実現しています。
心の健康がもたらすウェルビーイング
ルワンダの健康観で特筆すべきは、身体的な健康だけでなく、心の健康も重視している点です。
困難に直面しても、それを新たな始まりと捉え、自分を強くする経験として前向きに受け止める姿勢が大切にされています。このようなポジティブな思考は、人々の絆を深め、人生全体の幸福感を高める鍵につながっているのです。
このように、ルワンダでは伝統的な知恵と現代的の健康意識を融合させることで、持続可能なウェルビーイングを実現しています。
女性の経済的自立が切り開く新たな未来
―― 財政的なウェルビーイングの観点から、ルワンダの女性の経済参加はどのように進展しているのでしょうか?
制度改革による経済参加の基盤づくり
ルワンダでは、新たな憲法および法改正により、女性の相続権と土地所有権が確立され、経済的自立への道が開かれました。これに加え、ビジネス教育の機会や金融機関からの資金調達支援など、包括的な支援体制が整備されました。その結果、女性は農村部・都市部を問わず、経済活動に積極的に参加できるようになっています。
家庭経済の変革
女性の経済参加は、家庭生活にも大きな変化をもたらました。かつては夫に経済的に依存する立場であった女性たちが、今では積極的に家計に貢献し、子どもの教育投資も可能になりました。「夫のために靴を買いました」と誇らしげに語る女性が増えているという事実は、経済的自立がもたらした意識の変化を象徴的に示しています。
リーダーシップポジションへの躍進
女性の社会進出は、より広範な変革も生み出しています。ルワンダ開発銀行、ルワンダ国立銀行、その他の商業銀行など、重要な金融機関で女性が指導的な役割を担うようになっています。これは若い世代への強力なロールモデルとなり、さらなる女性の社会参画を促進しています。
小規模ビジネスからスタートして成功を収める女性起業家も増加しており、起業支援プログラムを通じて、新たな成功事例が続々と生まれています。
社会全体への波及効果
女性の経済参加の進展は、ルワンダ社会全体の包括的な経済成長に貢献しています。特に教育や医療分野への投資が増加し、社会インフラの強化にもつながっています。このように、女性の経済的エンパワーメントは、持続可能な社会発展の重要な推進力となっているのです。
ルワンダの女性エンパワーメントが示す未来への道筋
今回のインタビューを通じて、ルワンダにおける女性のエンパワーメントの総合的なアプローチが明らかになりました。その取り組みは以下の4つの分野で着実な成果を上げています。
🌱 1.法的および制度改革による基盤づくり
- 産休制度の拡充(1ヶ月→3ヶ月)と更なる延長の検討
- ジェンダーモニタリングオフィスによる政策実効性の確保
- 女性起業家支援プログラムの展開
- 女性の資金調達を支援する金融サービスの拡充
- 憲法および法改正を通じた女性の相続権および土地所有権の確立
🌱 2.家庭生活の変革
- 男性の育児・家事参加の一般化
- 家庭内での役割分担の意識改革
- 子どもへの平等教育の徹底
🌱 3.伝統と革新の融合
- 自然との調和を重視した伝統的な健康観の継承
- 「マイカー禁止の日」などの現代的な健康増進施策の導入
- コミュニティ全体での健康づくりの推進
🌱 4.経済的自立の実現
- 金融機関での女性リーダーの台頭
- 女性起業家の成功事例の増加
- 高水準の女性労働参加率(約84%)
- 教育・医療分野への投資拡大
このように、ルワンダは政策改革、制度的支援、文化的変革を組み合わせた総合的なアプローチにより、女性のあらゆる生活領域への参加を実現してきました。
特に注目すべきは、これらの取り組みが単なる経済的な成長だけでなく、以下のような社会全体のウェルビーイング向上につながっている点です。
→ 伝統的な健康観と現代的な施策の融合
→ 家庭内での相互理解と協力の促進
→ 女性の経済的自立を通じた家庭の繁栄の実現
→ 地域全体での健康づくりと知識共有
→ 教育・医療への投資拡大
このようなルワンダの経験は、日本を含む他の国々が、ジェンダー平等と社会全体のウェルビーイング向上を目指す上で、貴重な示唆を提供するものと言えるでしょう。
![]() Mukasine Marie Claire |
ルワンダ共和国のムカシネ・マリー・クレール駐日大使は、市民社会、公共サービス、民間部門において40年以上にわたる卓越したキャリアを積んできました。これまでに裁判官としての経験をはじめ、ジェンダー・家族促進省およびインフラ省の事務次官を務め、ルワンダ国会の上院議員としても活動しました。また、国家人権委員会の委員長を務め、民間部門ではルワンダの国営保険会社SONARWAの理事長、さらにはルワンダ投資グループの理事長としても活躍しました。豊富な経験と深い洞察力を持つ彼女は、今後もルワンダの利益を世界の舞台で推進する重要な役割を果たしています。
※原文(英語)
Ms. Mukasine Marie Claire, is the Ambassador of the Republic of Rwanda to Japan. With a distinguished career spanning four decades across civil society, public service, and the private sector. Ms. Mukasine’s journey encompasses pivotal positions of leadership. She has served as a Judge, Permanent Secretary within the Ministry of Gender and Family Promotion and the Ministry of Infrastructure. She also served as a Senator in the Parliament of Rwanda and the President of the National Commission for Human Rights. In the private sector, she was Director General of SONARWA, a National Insurance Company in Rwanda and the Director General of the Rwanda Investment Group. She comes with a vast experience and profound insights poised to further enhance bilateral relations and promote Rwanda’s interests on the global stage. |
![]() Yamana Shiyo |
中国で高校卒業後来日。慶應義塾大学経済学部卒業。米ジョンズ・ホプキンス大学で国際関係学修士号。その後、ゴールドマンサックス証券、さらに、野村ホールディングスにて5人家族(子供3人)帯同で2年半のシンガポール駐在も経験。金融業界で15年以上キャリアを積んだ2019年に生産性ガーデン株式会社を設立。2020年8月からはハリウッド株式会社の取締役を務め、2023年7月に一般社団法人SBMラボの代表理事に就任。アメリカの生産性環境研究所で認定生産性スペシャリスト(Productive Environment Institute)の資格を取得し、生産性向上と心の平和を促進するメソッドを活用しながら、SBM美容法を軸にしたウェルビーイングの啓発活動に取り組んでいます。
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